現在の位置: ホーム > 健康なニュース > 肥満 > 肥満と健康

肥満と健康

肥満が各種の生活習慣病と密接に関係していることはだれでも知っているが、肥満が病気を引き起すメカニズムについては、これまでよくわかっていなかった。しかし最近、この脂肪組織が単なるエネルギーを体内に蓄えるための臓器だというだけでなく、サイトカインなどの生理活性物質を活発に分泌している重要な臓器であることが明らかになってきた。「肥満には良性肥満と悪性肥満がある」という、日本肥満学会理事で日本動脈硬化化学会理事の松沢佑次大阪大学医学部教授に、肥満について聞いた。

Q.肥満のメカニズムを簡単に説明してください

A.食事で摂取したカロリーに対して、体内で燃えたり代謝されたり運動で消費されたりしたカロリーとの差がプラスになった場合、その余ったエネルギーが脂肪細胞の中で中性脂肪となって蓄えられます。それがマイナスになったら、これまで蓄積した脂肪を燃やしてエネルギーに変えるのです。脂肪組織は、エネルギー備蓄という意味からたいへんに重要な臓器なのです。
 今でこそ、肥満は病気との関連で問題にされますが、いつ食物が手に入るか分からないという飢餓の歴史を繰り返してきた生物にとって、エネルギーが蓄えられるということは大切なことなのです。それが今では、エネルギーはそれほど使わないのに、食べ物は豊富なために蓄え放しとなって、悪い方に出ているのです。

Q.肥満には良性と悪性があるということですが?

A.肥満が悪いという背景には、肥満が糖尿病や高脂血症、高血圧、心筋梗塞などの生活習慣病の大きな基盤になっているからです。だれでもエネルギーがプラスになれば太る。ただ、それを貯蔵する場所がどこなのかによって、病気につながる悪性肥満と、そうでない良性肥満とに分かれることが最近分かってきました。例えば体重が200キロになっても糖尿病にも高脂血症にもならない人がいます。ですから、どういうタイプの肥満が生活習慣病と関係があるのかという問題が、昔から研究されてきました。
 その研究から、皮下脂肪ばかりがついている人は病気になりにくい一方で、腹の周り、つまり腹腔内に脂肪がたまる人は糖尿病や高脂血症になりやすいことが分かってきました。前者を皮下脂肪型肥満、後者を内臓脂肪型肥満といいます。

Q.どうすれば良性肥満になるのですか?

A.それも現在の研究テーマの1つです。一般に、男性は女性より内臓脂肪がたまりやすく、女性は皮下脂肪が多い。男性ホルモンは内臓脂肪を、女性ホルモンは皮下脂肪をためやすいと考えられます。また男性は年齢が上がると内臓脂肪も増えますが、女性はなかなか増えない。ただ、女性も閉経後は急速にたまってきます。
 一番大きな問題として、運動不足があります。同じように太っていても、運動をしている人には内臓脂肪が少ない。また、食べ物では砂糖が内臓脂肪を増やします。魚肉などに多く含まれるエイコサペンタエン酸などを食べると内臓脂肪がたまりにくい、という研究もありますが、あまり大きなファクターではないと思います。

Q.同じ肥満でも欧米人と日本人では様相が違いますね?

A.例えば、ボディマスインデックス(BMI、体重を身長の2乗で割った値)でみると、日本では26・4が一応、肥満の判定基準になっていますが、アメリカなどでは30以上が軽い肥満です。日本人で30以上なら、かなりの肥満となります。日本ではもっと軽い肥満でも、糖尿病など合併症の問題が起こっています。アメリカ人は太っていてもインシュリンの分泌がいつまでも高いが、日本人はすい臓がへたってしまい、早く糖尿病になりやすい傾向があるようです。
 また、日本では、体重は肥満の範疇に入っていないけれどおなかがボコッと出ている人が問題になっています。CTスキャンで見ると、そういう人は腹腔内に内臓脂肪がたまっていて、糖尿病や高脂血症など心筋梗塞の予備群だということです。

Q.脂肪組織も重要な臓器だということですが?

A.これまで、ただ漠然と「肥満は悪い」とされてきましたが、ここ3、4年で一気に肥満に関する研究が進み、肥満がどうして病気につながるのかが解明されてきました。脂肪細胞は、エネルギーを備蓄して必要な時に供給するという役割だけでなく、大切な生理活性物質を分泌していることが分かってきました。免疫に係わる物質、細胞増殖に係わる物質、血液を固まらせる物質などを分泌しているのです。特に内臓脂肪にその作用が強い。
 なかでも、血液を固まらせる物質が過剰に生成されると血液中に血栓ができたり、動脈硬化が進んだりします。また細胞を増殖させる物質が過剰に出ると、血管の平滑筋細胞を増殖させて血管壁を厚くしたりします。つまり、脂肪細胞が適量でいい状態であれば生体防御として役立っているが、脂肪細胞が過剰に作られると、それが直接、生活習慣病につながってくるというメカニズムが明らかになってきたのです。

Q.脂肪細胞は多過ぎても少な過ぎてもよくないということですね?

A.私たちの研究室で行った研究ですが、一般にBMIと病気の指数をグラフに描くとJの形のカーブとなります。つまり太っていても、痩せていても病気になりやすいということです。日本人のJカーブの底のところは、平均すると22くらい。日本人では男女とも22ぐらいがめやすになります。
 糖尿病の原因としては、インシュリンの絶対量が減ることと、インシュリンの働きが悪くなるインシュリン抵抗性の問題とがあります。最近、そのインシュリン抵抗性を改善する薬が華々しく取り上げられていますが、その薬は皮下脂肪を増やす傾向があることがわかってきました。一方、脂肪細胞ができにくい病気の人がおり、そういう人は糖尿病になりやすいことが分かっていましたが、なぜそうなるのかは分かりませんでした。そこで最近、私たちの教室から米国のテキサス大学に留学している研究者が、脂肪細胞のない痩せたマウスが糖尿病になることを明らかにしました。つまり、適量の脂肪細胞があることが、生体に重要だということです。

Q.良性と悪性を簡単に見分ける方法を教えてください

A.ウエストの周りを見ることが大切です。おなかの肉をつまんで、それが厚い場合は皮下脂肪です。ウエストは太いのに、皮下脂肪があまりないというのは、内臓脂肪が多いということでよくありませんね。一般にウエストが100センチを超えるような場合は、まず内臓肥満型といっていいでしょう。ただし現役のお相撲さんなどは、CTスキャンで見ると皮下脂肪が多くて、内臓脂肪型の人は少ないのですね。

Q.ご自身で気をつけていることは?

A.私は減量のために食べることを我慢するなどということはしませんが、運動には気をつけています。1日1万歩は難しいけれど、万歩計をつけて毎日歩くようにしています。また、できるだけゴルフやテニスなどをして、良性肥満の状態を保っていきたいと思っています。


※日本肥満学会・日本動脈硬化学会理事 大阪大学医学部教授

中国漢方通販:  www.chinakanpo.com   2008-04-15
ショッピング・カート