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健康な心

小学生から中学生にかけての時代に、私は第二次大戦を経験した。当時よく「健康な精神は健康な身体に宿る」と言われて、身体を鍛えることに専念した覚えがある。しかしこれは必ずしも当たっていないように思う
 外来を訪れる患者さんの中には、肉体には何の異常もないのに、心が病んでいる人は大勢いる。確かに身体的疾患で長期間入院を余儀なくされている患者さんの多くは、抑うつ的であったり、神経症状態に陥っている人が多い。しかし私は、がんで余命いくばくもない人がみんな心を病んでいるとは言えないことをしばしば臨床的に経験してきた。
 インターン生の頃、私は鎌倉の救急病院で万年当直医として勤務していた。その頃に親しくなったぼうこうがんの初老期の男性がいた。彼は病気が進行し、導尿しなければ尿が出ない状態になり、苦しんでいた。私が導尿が上手だと信じ込んでいた彼は、毎晩私に導尿を依頼してきた。処置が終わると、彼は私を病室に引き留め、いろいろとよもやま話をした。病気が治ったら、浅草へ一緒にショーを見に行こうと言ったり、自分の家に下宿しろとすすめてもくれた。独身の私にお見合い写真まで届けてくれたことがある。正月休みで、私が田舎に帰省していた時に、彼は亡くなった。
 ある晩、彼の奥さんが私を訪ね、「故人の遺志だから」と言って、私に無理やり「志」を渡してくれた。私は彼の思い出に、聴診器を買い求めた。私は40年たった今でも彼の顔をはっきりと覚えている。
 人の心は知・情・意から成り立っている。知とは知恵・知識・知能であり、情とは感情・情緒・思いやりである。そして意とは、意志・意欲・やる気である。健康な心とは知情意がバランスを保ちながら、年齢相応に成長している状態である。この際、肉体的なこととは直接的な関係はない。
 最近、がん患者に「生きがい療法」が盛んに施行され出した。余命いくばくもない患者に生きがいを持たせようというこの試みは、森田療法から出たものである。森田療法では人はみな「生の欲望」を生まれながらにして持っていると考える。重病で活動範囲が極度に制限されているとしても、許される範囲で人生をより有意義に生きようとする姿勢は、まさに健康な心の持主なのである。自分だけのためにではなく、周囲の人々のために役立とうとする努力は、若い頃から培っておくべきことである。

中国漢方通販:  www.chinakanpo.com   2008-04-17
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